支援記録の書き方の手引き
だれが読んでも同じ場面が思いうかぶ記録を目指して。事実と考えを分け、本人の言葉をそのまま、具体的に書くコツをまとめました。
記録は何のために書くの?
支援をつなぐため
ほかの職員・次の勤務の人が読んで、同じように支援できるようにします。
本人の変化に気づくため
毎日の記録を見返すと、体調・気持ち・できることの変化がわかります。支援計画の見直しにも使います。
支援したことを示すため
どんな支援をしたかの証拠になります。本人・家族への説明や、運営指導・事故のときの確認にも使われます。
本人の権利を守るため
本人や家族から見せてほしいと言われることもあります。本人が読んでも失礼にならない書き方をします。
事実と考え(解釈)を分ける
見たこと・聞いたこと・測ったこと(事実)と、職員がそう思ったこと(考え)を混ぜないように書きます。 考えを書くときは「(職員の考え:〜)」のように分けると、読む人が区別できます。
| 事実(見た・聞いた・測った) | 考え(職員の解釈) |
|---|---|
| 10時ごろ、作業室で「帰りたい」と3回言い、玄関の方へ歩いて行った。 | 家のことが気になっているのかもしれない(職員の考え)。 |
| 昼食を半分ほど残した。「おなかがいっぱい」と話した。 | 朝食の量が多かったためか(職員の考え。朝食の量は未確認)。 |
5W1H で書く
全部そろわなくてもかまいません。わからないことは「不明」「確認中」と書き、想像でうめないようにします。
- いつ日付・時刻
- 例:6月3日 14時10分ごろ
- どこで場所
- 例:食堂の入り口
- だれが本人・関わった人
- 例:Aさん、職員B
- なにを起きたこと・したこと
- 例:床に座りこんだ
- なぜきっかけ・前後のようす(わかる範囲で)
- 例:直前に大きな音がした
- どのように職員の対応と、そのあとの本人のようす
- 例:静かな部屋へ誘うと、5分ほどで落ち着いた
本人の言葉は、そのまま書く
本人が話したことは「 」に入れて、言ったとおりに書きます。職員がまとめ直すと、本人の思いが変わって伝わることがあります。
よくない例:本人は帰宅を希望していた。
よい例:「お母さんが待ってるから、もう帰る」と話した。
言葉で話さない人は、表情・しぐさ・指さし・サイン・絵カードなど、どう伝えたかを書きます(例:絵カードの「トイレ」を指さした)。
言いかえの例
否定的な言葉・主観的な言葉・あいまいな言葉は、実際に何をしたか・何が見えたかに言いかえます。
| さけたい書き方 | なぜ? | 言いかえの例 |
|---|---|---|
| 「暴れた」 | 何をしたのかがわからない | 机を両手で3回たたき、いすを後ろに倒した |
| 「パニックになった」 | 人によって思いうかべる様子が違う | 大きな声で「いやだ」と叫び、耳をふさいでその場にしゃがんだ |
| 「わがままを言った」 | 職員の評価(決めつけ)になっている | 「お茶ではなくジュースがいい」と話した |
| 「拒否した/言うことを聞かない」 | 本人の思いが見えない | 入浴に誘うと「今日は入らない」と答えた。15分後に再度誘うと入浴した |
| 「問題行動があった」 | 何が起きたか伝わらない | 隣の人の作業の部品を2回取った |
| 「落ち着きがない」 | 様子があいまい | 作業中、10分の間に5回席を立ち、窓の外を見に行った |
| 「機嫌が悪い」 | 職員の感じ方になっている | 朝のあいさつに返事がなく、眉をよせて下を向いていた |
| 「徘徊した」 | 本人なりの目的が見えなくなる言葉 | 「家に帰る」と言い、廊下を行ったり来たりしていた |
| 「食事を全部食べさせた」 | 本人が主語になっていない | 食事を全量食べた(スプーンで口元まで介助) |
| 「いつもどおり/特に変わりなし」 | 何を見て判断したかわからない | 作業に1時間取り組み、昼食は全量。体温36.5度。表情は穏やかだった |
言いかえの例の数字や様子は、説明のためのものです。
よい例・よくない例
作業中のようす
よくない例
Aさん、今日も機嫌が悪く、作業を拒否して暴れた。困った人だ。
- 「機嫌が悪い」「困った人」は職員の評価
- 「暴れた」では何をしたかわからない
- 時刻・きっかけ・対応が書かれていない
よい例
10時15分、作業室。部品の袋づめを始めて10分ほどで、袋を床に投げ、「やらない」と大きな声で言った。直前に隣の席で電動工具の音がしていた。職員Bが音の少ない席へ移ることを提案すると、うなずいて移動。10時30分から作業を再開し、昼まで続けた。(職員の考え:大きな音が苦手な可能性がある。次回、席の場所を検討したい)
- 時刻・場所・したことが具体的
- きっかけと職員の対応、そのあとの様子がある
- 職員の考えは( )で分けて書いている
体調
よくない例
体調不良っぽい。様子見。
- 何を見て体調不良と思ったかわからない
- 「様子見」では、何をどこまで見るのかがわからない
よい例
14時、「頭が痛い」と話す。体温37.4度。顔が赤い。看護師Cに報告し、静養室で休む。15時に再度測ると37.2度。「少し楽になった」と話した。家族に電話で伝えた(16時、母)。
- 本人の言葉・測った数字・見た様子がある
- だれに報告し、どう対応したかがある
- 家族への連絡の時刻と相手が書かれている
書くときのコツ
- その日のうちに、できるだけ早く書く(時間がたつと記憶があいまいになります)。
- 本人の言葉は「 」に入れて、言ったとおりに書く。方言や言いまちがいも、意味が伝わる範囲でそのまま。
- 本人を主語にして書く(「〜させた」ではなく「〜した(介助:〜)」)。
- あだ名・略語・その事業所だけで通じる言葉は使わない。
- 人をおとしめる言葉・決めつける言葉は使わない。本人や家族が読んでも失礼にならないように。
- できたこと・よかったことも書く。困ったことだけの記録にしない。
- 書きまちがえたら、消さずに二重線で直す(紙の場合)。電子記録は事業所のルールで修正履歴を残す。
- ほかの利用者の名前は、必要なときだけ書く(記録の開示のときに配慮が必要になります)。
- 身体拘束をやむを得ず行ったときは、その様子・時間・理由など、決められた記録が必要です。事業所の手順に従ってください。
記録の様式・書く項目・保存のしかたは、事業所の決まりに従ってください。
ほかの道具
このページは、現場で役立つ一般的な目安をまとめたものです。実際の対応は、事業所のマニュアル・手順、支援計画、医師・看護師など医療職の指示に従ってください。
